お世話になったエキスパートの皆さん

井本 伸廣(いもと のぶひろ)

 地質学を専門とする理学博士。京都教育大学教授、学長を歴任し、現在は京都教育大学名誉教授として活躍する。京都府の地質図編纂に尽力され、その功績は今も残る。2016年には、NHKの人気番組「ブラタモリ」で京都の地質を解説した権威。京都産の天然砥石についても造詣が深く、特に仕上げ砥(合砥)を「砥石型珪質頁岩」と命名し、学術的にも認知されている。日本地質学会において、京都府の県の石としてこの石を「鳴滝砥石」(歴史的主要産地として京都市右京区の鳴滝の名を冠しているが亀岡産の砥石も含む)として登録するにいたらしめた立役者でもある。亀岡市在住。

高野 長生(たかの ながお)

 定年退職後、手研ぎの刃物研ぎ専門店「研ぎ陣」の門を叩き、研ぎの世界へ。毎年400~500本の包丁を研ぐ。北関東の砥石に造詣が深く、上赤沢砥、武州合砥、五日市荒砥の再発見や、飛駒砥、南牧砥沢砥、大泉砥、荒内砥、助川砥、会津砥などを採掘者のお宅訪問、砥石山採石など情報収集に明け暮れている。いつも何事かあるたびに、びっくりするほど沢山の天然砥石を背負って駆け付けてくれる。埼玉県坂戸市在住。
砥石の師は 瀬戸山 正氏 「中砥石と歩いた三十年」(削ろう会 会報)筆者
研ぎの師は 藤阿弥功将氏 「研ぎ陣」主幹 東京研磨マイスター学院

田中 清人(たなか きよと)

 丹波篠山で楽器工房Kiyondを経営。撥弦楽器(弦をはじいて音を出す楽器のことでギター、マンドリンなどがある)の製作、修理を行う。楽器のことはもとより、楽器製作に欠かせない刃物と砥石に関する知識と経験はなまなかのものでなはい。氏のブログを覗いてみると、知識の豊かさと正確さには驚くばかり。特に天然砥石を見る目とその使いこなしは神技といっても差し支えない高みにある。素晴らしい刃物、砥石、それらを使う職人の腕、これらが融合すると、得も言われぬ美しさが出現する。これとどう関係があるのか分からないが、どうもアンモナイトをこよなく愛しているらしい。兵庫県篠山市在住。

玉置 城二(たまき じょうじ)

 玉置美術刀剣研磨処を経営する刀剣研磨師。日本美術刀剣保存協会や日本刀文化振興協会が主催する日本を代表する技術発表会や技術展覧会において多くの受賞歴を持つ。これまでに手掛けた刀は、1000振りを優に超え、平安朝から現代まで各時代の錚々たる名刀を多数研磨。またテレビドラマや映画、コミックスなどの刀剣研磨指導も行う。この仕事が天職だと言い切るが、最初は単に就職先として選んだだけというエピソードもある。今注文すると仕上がりは3年待ちという、人気の若手実力派。京都市左京区在住。

土橋 要造(つちはし ようぞう)

 亀岡市において天然砥石を掘り続けて130余年、創業明治10年の砥取家四代目当主。京都老舗の会会員。家業を継いで40年以上となる。現在は商標「丸尾山蔵砥」で知られる丸尾山産の天然砥石を主に採掘・販売している。京都に産出する天然砥石は鎌倉時代から800年の歴史を持ち、日本の文明と文化を支えてきた。優れた砥石を掘り、使えるように仕上げるのには長年の経験と勘が物を言う。しかし優れた職人がもうほとんどいなくなり、この伝統的な産業が終焉を迎えようとしていたとき、天然砥石という消えかけた火をインターネットを使ったビジネスの開発により再び燃え立たせた功労者。天然砥石館、さらには匠の集まる村の建設を目指して、日夜走り回る日々が続く。亀岡市在住。

布谷 浩二(ぬのや こうじ)

 大阪北新地の一角に佇む日本料理店「うの和」の料理長。かつての高級料亭、船場吉兆出身で、数々の名店で修行を重ね、2013年、2014年は北新地「ぬのや」でミシュラン1つ星を獲得。腕前は折り紙付き。旬の素材、お酒、器などにもこだわり、落ち着いた特上の時間でおもてなし。カウンター席では胸のすくような包丁捌きを目の前で堪能できる。NHKの人気番組「美の壺」に出演し、薄刃包丁による大根の桂むきや柳刃包丁によるお造りなど、見事な和包丁の技とともに天然砥石による包丁研ぎも披露。大阪料理会で食材や技術を後世に残すために努める。大阪市北区在住。

藤原 将志(ふじわら まさし)

 月山義高刃物店の三代目として代表を務める。包丁専門の研ぎ師で、顕微鏡を使用した検品を行いながら料理人との実験や研究を重ね、切れ味を追及している。包丁の切れ味で味が変わるという科学的証明を取り、二冊の本の監修を行った。またこのノウハウをもとに、国内外1000人を超える方に研ぎ講習を行ってきたという実績を持つ。2016年には日本商工会議所青年部YEGビジネスプランコンテストにおいて、研ぎをテーマにしてグランプリ受賞という快挙を成し遂げた。常に新たな研ぎの世界を模索する活動派。ラーメンが大好き。三重県松阪市在住。

村上 浩一(むらかみ こういち)

 大阪で包丁研ぎを専門とする「研ぎ屋むらかみ」を経営する。天然砥石による手研ぎ仕上げにこだわりを持ち、さまざまな性質を持つ多様な天然砥石を、包丁に合わせて使い分ける。まさしく合砥(あわせど、天然仕上げ砥石の通称。合わせるという様子が語源と言われている)の使い手である。氏の仕上げた包丁は見る者の目を釘付けにする美しさを持つ。当然ながら包丁としての切れ味にはこだわり、包丁の形を造り込むところから始まり(注:必ずしもすべての新品の包丁が決して良く切れるわけではない)、最後の刃先の仕上げまで、食材に最適な研ぎ込みを行う。天然砥石で仕上げれば、長切れし錆びにくいという特徴があるため、錆びやすい炭素鋼の和包丁にはお勧めの由。大阪市生野区在住。

館長ご挨拶

 このたび、天然砥石館の館長を仰せつかりました上野でございます。
 私はいつからともなく砥石が好きになっていて、自宅の包丁を自己流に研いで楽しんでいました。最初に買った砥石が丹波の青砥だったのを覚えています。しかし、最近になって、天然砥石がほとんど採掘されなくなっていて、歴史の中に埋もれてしまうかもしれないという現状を知りました。
 その折、ご縁がありまして、一般社団法人日本研ぎ文化振興協会の代表理事の土橋要造さんが同じ思いを胸に抱いていることを知り、長年勤めた会社を退職し、この亀岡の地に移住して一緒に本館をオープンする運びとなったのです。その間、多くの方々のお世話になりました。この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
 この天然砥石館を拠点にして、我が国が世界に誇る貴重な天然砥石文化を後世に伝承してまいる所存でございます。
 先輩諸氏から見ると素人同然ではございますが、精進してまいりますので、ご指導をお願いする次第です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

天然砥石館 
館長  上野大成